焦心じら)” の例文
上段に振り冠った陣十郎は、その刀を揺すぶり揺すぶり、命の遣り取りのこの際にも、大胆不敵悠々寛々一面相手の心を乱し、あせらせ焦心じらせ怒らせようと、憎々しく毒々しく喋舌りつづけた。
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
故意わざと今日は権高に振る舞い、焦心じらして焦心して訊いたところ、わたしの機嫌をそこねまいとしてか、ほんの最近いましがた酔った口から、うかうかみんな喋舌しゃべってしもうた……右衛門さんとは、以前まえからの約束
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二人にとっては死は楽だ。決して決して苦痛ではない。だから死ぬのは止めようではないか。活きていて苦痛を味わおうではないか。そうして恐ろしい恋敵を、あくまで焦心じらしてやろうではないか。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)