無反むぞ)” の例文
とたんに、きはなたれた無反むぞりの戒刀かいとう、横にないでただ一せんの光が、松の枝にブラさがった大九郎のどうを通りぬけてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刹那せつな、冷気が頬をかすめる。かいくぐった文次、縁側へ出た。追いすがる無反むぞりの一刀、切っ先が点となって鶺鴒せきれいの尾みたいに震えながら、鋩子ぼうしは陽を受けて名鏡のようにぴかありぴかりと光る。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
紫白しはく手綱たづなを、左手ゆんでに引きしぼり、右手めてに使いなれた無反むぞりの一けんをひっさげた龍太郎は、声もたからかに
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時に、そのすさまじいつるぎのうずへ、とつとして、横合いからことばもかけずに、無反むぞりの大刀をおがみに持って、飛びこんできた人影がある。六部ろくぶ木隠龍太郎こがくれりゅうたろうであった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)