火膨ひぶく)” の例文
その煙の奥の方から本郷の方へと陸続と避難して来る人々の中には顔も両手も癩病患者らいびょうかんじゃのように火膨ひぶくれのしたのを左右二人で肩にもたらせ引きずるようにして連れて来るのがある。
震災日記より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
められる方が災難さ。目隱しが低い鼻の上へずつこけて選み討ちに捕まへるんだもの、やり切れないよ。御覽よ、先刻お前さんに嘗められたお駒ちやんの頬が、火膨ひぶくれになつたぢやないか
何のそれほどご案じになることがござりましょう火膨ひぶくれの痕が直りましたらやがて元のお姿に戻られますとなぐさめればこれほどの大火傷おおやけど面体めんていの変らぬはずがあろうかそのような気休めは聞きともないそれより顔を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)