濁聲だみごゑ)” の例文
新字:濁声
いたづらに喰ひ盡しむしり取り名は美しく毛だらけにてヂイ/\と濁聲だみごゑに得意を鳴らすもの嗚呼なきにはあらざりけり枯るゝ松こそ哀なれ
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「やアい、正午ひるぢやぞ。」と叫ぶ農夫の濁聲だみごゑが何處からか聞える。眠さうな牛の鳴き聲もしてゐた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
火光あかりまぶしく洩れて、街路を横さまに白い線を引いてゐたが、蟲の音も憚からぬ醉うた濁聲だみごゑが、時々けたゝましい其店の嬶の笑聲を伴つて、喧嘩でもあるかの樣に一町先までも聞える。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
隣り座敷では三味線さみせんがいよ/\はげしくなつて、濁聲だみごゑうたふ男の聲も聞えた。唄ひ終ると、男も女もどつと一時に笑ひはやすのが、何かのくづれ落ちるやうな勢ひであつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
濁聲だみごゑ上げ其の合の手には飮ませじと云ふ酒を今ま一合注げ二合温めよと怒りつ狂ひつどしめくなりゑひての上の有樣は彼も此もかはりはなし耻べきかな醉狂すゐきやう愼むべきかな暴飮
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
喰ひ盡して其松をあはれに枯し却つて其身はヂイ/\と濁聲だみごゑを放つて得意を鳴らす其名を聞けばおとなしやかに松虫といふ汝に似たる人間もまた世になきには非ざりけり數百万本の松の芽を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)