ささなみ)” の例文
旅僧はその時、南無仏なむぶつと唱えながら、ささなみのごとき杉の木目の式台に立向い、かく誓って合掌して、やがて笠を脱いで一揖いちゆうしたのであった。——
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも浪人はそういう姿勢で、静まり返っているのである。ただし刀身は脈々と、ささなみのように顫えている。で、月光がはねられて、顔の隈がたえまなく移動する。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
水底みなぞこぬしむ……その逸するのを封ずるために、雲にゆわえてくろがねの網を張り詰めたように、百千のこまかな影が、ささなみって、ふらふらと数知れず、薄黒く池の中に浮いたのは、亀の池の名に負える
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)