溺死人できしにん)” の例文
水は、いいあんばいに、腰のところでとまり、それ以上はふえなかったから、一郎は、かろうじて溺死人できしにんとならないですんだ。
未来の地下戦車長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その底に溺死人できしにんのドロドロにくずれた顔が浮いているかと思うと、ある箇所では、頭の上から、サッと風を切って、振り乱した白髪しらが藍色あいいろの顔、まん丸に飛び出した片眼
妖虫 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
子獅子こじし千仞せんじんの谷から、こけつ、まろびつ、い上るような勢いで、川下の、その川流れの、溺死人できしにんの、独断の推定の道庵の土左衛門の存するところに、多数が群がり集まって
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
わが勇敢な、しかも自分も腹半分水を飲んだ半溺死人できしにんのような、万寿丸は、その臨月のからだで、目的の難破船に、わずかに船首を向けた。きわめて、それはわずかの程度であった。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
水死人は社会的の現象としては、極くありふれた事である。新聞社に居る啓吉はよく、溺死人できしにんに関する通信が、反古ほご同様に一瞥いちべつあたえられると、直ぐ屑籠くずかごに投ぜられるのを知っている。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
溺死人できしにんがあるよ、しかも八人!」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)