溝川どぶかわ)” の例文
すると、すぐそばに、ひとりの男の子が、溝川どぶかわの上を棒でたたいていました。にごった水のしずくが緑の枝の上にはねあがりました。
黒い溝川どぶかわと、枯れ草と、霜解けとの中に、もっそう長屋の塀が、っくり返っていた。百戸ばかりの牢番が住んでいる。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは兎に角風流な気がした。が、翌朝になって見ると、潯陽江にそうろうと威張っていても、やはり赤濁りの溝川どぶかわだった。楓葉荻花秋瑟瑟ふうようてきかあきしつしつなどと云う、洒落れた趣は何処にもない。
長江游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
私が道端の溝川どぶかわへ飛びこまなかったら、とても助からなかったろう……悪意がないものなら、そのとき車をとめるべきだが、私が溝川へ落ちこんだのを見ながら、車を返して
あなたも私も (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
水兵のひとりは浅い溝川どぶかわへ滑り落ちて、泥だらけになって這いまわって逃げた。
半七捕物帳:40 異人の首 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「人が、悪口に、もッそう長屋という、牢番ばかりが住んでいる棟がある。そこに、真っ暗な、紺屋の溝川どぶかわがあって、西の土橋から七軒目、路地の角だよ」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「脅かすない。てへへへ」と、わら草履ぞうりの土を、枯れ草へ叩いて、青い迷走の溝川どぶかわを泣きたそうに見つめた。
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、門前の溝川どぶかわぞいに、笠をぬいで腰を下ろしかけると、何かささやきあっていた荘丁らが来て
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)