湿疹しっしん)” の例文
かわけば素焼のように素朴な白色を現した。だが、その表面に一度爪が当ったときは、この湿疹しっしん性の白癬はくせんは、全図を拡げて猛然と活動を開始した。
ナポレオンと田虫 (新字新仮名) / 横光利一(著)
社会の定命の下にも人類の不滅が感ぜられる。噴火口の傷口や硫気口の湿疹しっしんなどを所々に有するとも、潰瘍かいようして膿液のうえきをほとばしらす火山があろうとも、地球は死滅しない。
余りに湿度が多いため、武器庫として不適当と認められて、久しくいていたあとが官兵衛の獄に利用されたものであろう。官兵衛の満身はそのために、見るかげもない湿疹しっしんを病んでいる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内田百間うちだひゃっけん君の「掻痒記そうようき」を読んで二三日後に偶然映画「夜間飛行」を見た。これに出て来るライオネル・バリモアーの役が湿疹しっしんに悩まされていることになっていてむやみにからだじゅうをかきむしる。
破片 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
塹壕ざんごうの交差、枝の形、鴨足かもあしの形、坑道の中にあるような亀裂、盲腸、行き止まり、腐蝕した丸天井、臭い水たまり、四壁には湿疹しっしんのような滲出物しんしゅつぶつ、天井からたれる水滴、暗黒
夏となって、皮膚の湿疹しっしんはよけいにひどくなり、髪の根にははれさえもってきたが、ただそれだけの歳月が、この牢獄の内にも過ぎたことはたしかである。——時の歩み以外に待つものとては何もない。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)