“湯釜(ゆがま)” の例文
そして、上り湯を思い切りよく浴びる。藤三は湯釜(ゆがま)の上に胡坐(あぐら)を掻(か)いては居ない。彼は流し場に出て来て、せかせかと忙がしそうに働く。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
切炉(きりろ)で手がすべって湯釜(ゆがま)を転覆させたとき、ちょうどあやが火箸を取ろうとしていて、その右手の先へ熱湯がもろにかぶってしまったのだ。叫び声をあげたのは脇にいた母のたえであった。
十八条乙 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
番頭の藤三は湯釜(ゆがま)の上に胡坐(あぐら)を掻(か)き、裸の胸に両腕を組んで漠然とした眼を流し場に向けて居たが、ぎょっとした様に表情を硬くし、眼をしばたたくと片唾(かたず)を呑んだ。
刺青 (新字新仮名) / 富田常雄(著)
由紀はすぐ茶を持ってゆくつもりで、湯釜(ゆがま)のかげんをみていると、ふいに客間から異常に昂ぶった声が聞えてきた。それは思わず耳をすまさずにいられないほど異常なひびきをもつ声だった。
日本婦道記:藪の蔭 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)