湯沸サモワル)” の例文
少しでも露西亜小説を読んだ事のある人は、あちらではどんな田舎でも、家庭のあるところには屹度湯沸サモワルがあるのを知つてゐるだらう。
が、主人は銀の手のついたコツプへ、湯沸サモワルの茶を落しながら、それぎり何とも口を利かなかつた。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
楂古聿チヨコレート嗅ぎて君待つ雪の夜は湯沸サモワルの湯気も静こころなし
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
実際伯爵の持物にしては、少し洒落すぎてゐるが、それを見た多くの客達に誰ひとり湯沸サモワルだと気がついた者はなかつた。
陰気な客間ザラ少時しばらくの間、湯沸サモワルのたぎる音の外には、何の物音も聞えなかつた。
山鴫 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
湯沸サモワルのおもひを傾けてあつあつき珈琲を掻きたつれば
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
湯沸サモワルは便利で、加之おまけに火持ちがいいところから、聯合軍が浦塩ウラジホつてから、あの界隈の湯沸サモワルは段々ひ集められて、アメリカあたりへ輸出された。
しづかな五ぐわつひる湯沸サモワルからのぼる湯気ゆげ
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
湯沸サモワルの湯気の呼吸いき
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)