深志ふかし)” の例文
「——信州、深志ふかしの城に入れ置かれました小笠原貞慶さだよしも、伯耆守ほうきのかみの出奔と同時に、妻子眷族けんぞくを連れて、大坂表へ、落ちのびて行った由にござります」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深志ふかしというところの端に近く、身分の軽いさむらい屋敷がひとかたまりになっている、そのなかでも貧しげな古びた幾棟かのなかに、その家はあった。
日本婦道記:糸車 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
そうでないとすると、弟深志ふかしは今や、うまく行つて大学生か。それとも、中学を終つて平凡な腰弁か? 闇屋の手先などになつていてくれなければよいが。
光は影を (新字新仮名) / 岸田国士(著)
信州松本の深志ふかしの天神様の氏子たちは、島内村の人と縁組みをすることを避けました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なまよみの甲斐かいの国、山梨やまなしあがたを過ぎて、信濃路しなのじに巡りいでまし、諏訪すわのうみを見渡したまひ、松本の深志ふかしの里に、大御輿おおみこしめぐらしたまひ、真木まき立つ木曾のみ山路、岩が根のこごしき道を
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
(3)小笠原長時(筑摩、安曇あずみ郡、深志ふかし城〈松本〉)
川中島合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)