淀屋よどや)” の例文
奈良茂ならも紀文きぶん難波屋なんばや淀屋よどやなどという黄金こがねの城廓によるものが、武人に対立しだしている。小成金しょうなりきんはその下に数えきれないほど出来た。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だから振られるんだ、遊女おいらん持てのしない小道具だ。淀屋よどやか何か知らないが、黒の合羽張かっぱばり両提ふたつさげ煙草入たばこいれ、火皿までついてるが、何じゃ、塾じゃ揃いかい。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
町年寄の奈良屋ならや右衞門、朱座あかざ淀屋よどや甚太夫、銀座の小南利兵衞、油屋の大好庵だいかうあん、米屋の桑名屋くはなや、紙屋の西村、佛師の大内藏——皆んな公儀御用の家ばかりだ
暮靄ぼあい寒村をこむる夕方、片品川の水声を聞きつつ淀屋よどやというへ泊す。
「何をひがんでいるんだ。踊りを見に来て、そんなまずいつらをして歩く奴があるもんか。オイ周馬、今夜はおれがおごろうぜ。松源まつげんか、万辰まんたつか、淀屋よどやか」
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)