流連ゐつゞけ)” の例文
まあそれ迄はいうても扱ひやすかつたですが、困つたのはそれからでした。いつかあの人が流連ゐつゞけをしてお拂ひが足りなくなりましてね。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
祇園の空を飛んだ若い飛行将校よ、あの折シヨペンハウエルが万亭まんていの二階で流連ゐつゞけをしてゐなかつたのは君に取つて勿怪もつけ幸福しあはせであつた。
五両なり十両なりそれを残らず引攫ひつさらつて飛出して、四日、五日、その金の有らん限り、流連ゐつゞけして更に家に帰らうとも為なかつた。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
「石川のんち。今日も流連ゐつゞけや、幸ひ雨になりさうで、結構なこつちや。」と、丹前姿で突つ立つたまゝ言つた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その彼が二十二の夏、六つも年上の女の許に流連ゐつゞけした時の場面が先づ目の前に浮んで來る。いかにも鮮明に、おいらん臭いにほひがむつと鼻をつく程十分描き出されて居る。
近くの町の料理屋で流連ゐつゞけするのである。正文は激怒した。だが正文が恰好をつけるに急で、慌てて結婚の話を進めたと同様に、相手の方でも何か過失があつて結婚を急いでゐたらしい。
医師高間房一氏 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
かれはその三日前ばかりから、湯田中に流連ゐつゞけして、いつもの馴染なじみを買つて居たが、さて帰らうとして、それに払ふべき金が無い。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
三日も流連ゐつゞけしたので、日取りの狂ひは後の道中で取り返すから、下向の迎ひを平井明神の境内に待ち惚けさせる心配はないが、苦勞なのは、めい/\の懷中ふところであつた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
妹株になつてゐる梅代といふ女郎が流連ゐつゞけの客が今漸く飮みつぶれて寢てしまつたといふので
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
枕も上らずせつて居ると、父親は又父親で、失敗の自棄やけいやさん為め、長野の遊廓にありもせぬ金を工面して、五日も六日も流連ゐつゞけして帰らぬので、年をつた、人の好い七十近い祖父が
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)