「ウム……言われて名乗るも烏滸おこがましいが、練塀小路ねりべいこうじかくれのねえ、河内山宗俊こうちやまそうしゅんたァ俺のことだッ」とでもやられて見ろ、仮令たといその扇子が親譲りの
青バスの女 (新字新仮名) / 辰野九紫(著)
するとある日、彼等の五六人が、まるい頭をならべて、一服やりながら、例の如く煙管のうわさをしていると、そこへ、偶然、御数寄屋坊主おすきやぼうず河内山宗俊こうちやまそうしゅんが、やって来た。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
例えば河内山宗俊こうちやまそうしゅんのごとく慌てて仰山ぎょうさんらしく高頬たかほのほくろを平手で隠したりするような甚だ拙劣な、友達なら注意してやりたいと思うような挙動不審を犯すのであるが
初冬の日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
剃り立て頭に頭巾をかむり、無地の衣裳にお納戸色なんどいろの十徳、色の白い鼻の高い、眼のギョロリとした凄味すごみのある坊主、一見すると典医であるが、実は本丸のお数寄屋すきや坊主、河内山宗俊こうちやまそうしゅんが立っていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
河内山宗俊こうちやまそうしゅんは、ほかの坊主共が先を争って、斉広なりひろの銀の煙管きせるを貰いにゆくのを、傍痛かたわらいたく眺めていた。
煙管 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)