汽罐かま)” の例文
新字:汽缶
「私かね? 私あ、月寒までです。前から知っている牧場で、汽罐かまを一つ据え付けたもんですて、そこのまあ火夫というようなわけで……」
喫煙癖 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
汽車に残つてゐるのは工事担当の技師ばかりだ。技師は物思はし四下あたりを眺めて汽罐かまの蒸気の音に耳を傾けてゐる。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
汽罐かまの焚きかたから注油の方法にいたる機関助士作業から、蒸気加減弁レギュレーターヴァルヴ反転挺リバーシングリーバーの扱いかた、各種制動機ブレーキの使用法、脇路活栓バイバッス・コック排水弁ドレイン・ヴァルヴの操作法、空転時の処置
「君は、また運転士だぜ。すぐ用意をしたまえよ。博士の修理が出来たら、僕は、すぐに機関を動かしてみせる。そのまに、石炭を汽罐かまに放り込んで置こうか」
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
中はボイラーの熱でムンとして、それに暗かった。彼等はすぐ身体中汗まみれになった。汽罐かまの上のストーヴのロストルのような上を渡って、またタラップを下った。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
汽罐かまに石炭は積まれたり。
氷島 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
コンパスが狂ったのは、コンパス自身の罪ではなく、何かの、見えぬ力が、船の進行を邪魔しはじめたからだ。機関エンジンの狂ったのでも、汽罐かまが破裂したのでもない。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)
汽罐かまの前では、石炭カスが引き出されて、それに水でもかけたらしく、濛々もうもうと灰が立ちのぼっていた。その側で、半分裸の火夫達が、煙草をくわえながら、ひざを抱えて話していた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
陳君は、この日朝から汽罐かまいた。蒸気が機関のパイプに充満すると、動力をはたらかして、圧搾空気をつくった。それを甲板まで導いて、麻布の風船の中へ充填じゅうてんした。
怪奇人造島 (新字新仮名) / 寺島柾史(著)