水槽みずおけ)” の例文
月はポプラの枝々をもれて青白い光を戸板や石うすやこもや水槽みずおけに落とすと、それらの影がまざまざと生きたようにういてくる。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
にんじんは、寝台から飛びおり、裏庭の水槽みずおけへ顔を洗いに行く。石鹸は持って行かない。水槽みずおけは凍っている。氷を割らなければならない。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
直ぐ彼等の横にあった水槽みずおけの中の美しい色々の草花を指差しながら、盛んに花環を拵えている親爺へ、言いました。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
四角な水槽みずおけうなぎを泳がせ釣針を売る露店が、幾軒となく桜田本郷町の四ツ角ちかくまで続いて、カフエー帰りの女給や、近所の遊人らしい男が大勢集っている。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
それは最新式のもので、大きな水槽みずおけの下から横むきに水を猛然と噴きだす式のものであった。
空気男 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
ぼうとした湯気の中に水槽みずおけに落ちる水の音が聞こえた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
かれは水槽みずおけへりにのせたてぬぐいを、ふところに押しこんで家を飛びだした。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)