母御前ははごぜ)” の例文
「尼前……。これでいいか。高時、こういたしましたと、母御前ははごぜへ、おつたえしてくれよ。よう、おわびしてくれよ」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すこやかなれかしと祈りてこの長き世をば尽さんには随分とも親孝行にてあられよ、母御前ははごぜの意地わるに逆らふやうの事は君として無きに相違なけれどもこれ第一に心がけ給へ、言ふことは多し
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ま、会おう。これへご案内には及ばぬ。わしの方から出向くのが礼儀だ。……母御前ははごぜだからの」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
面倒だ。枝葉はよせ。口では、そちにかなわん。——だが重ねて申すぞ。たとえ母御前ははごぜの尼が、どう仰せあろうと、ならぬ事はならぬ。もってのほかだ。——頼朝の生命いのち
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜ、和郎わろは、母方ははかたの身よりへ無心に行きなさらぬ。わろの母御前ははごぜは、みな、れッきとした、藤原の朝臣あそんとやら、中御門様とやら、きら星な御貴人ぞろいではおわさぬか。
これは足利殿の末党まっとう一色村の者どもですが、きのう不知哉丸いさやまるさまの母御前ははごぜより、途中、ご危難のよしのらせをうけ、おあるじ刑部ぎょうぶ殿のいいつけにて、夜来、ご安否を案じて
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
容貌かおは、母御前ははごぜに似よ。血は父に似よ」と、口ぐせにいった。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お。……たれかと思うたら、覚一の母御前ははごぜか」
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)