殺鼠剤さっそざい)” の例文
これを考えることなくしては殺鼠剤さっそざい・駆鼠薬を売る者は、物売りとしては怜悧れいりであったかも知れぬが、少なくとも憂国の志士ではなかった。
殺鼠剤さっそざいがいちばん有効だという事は聞いていたが、子供の多いわが家では万一の過失を恐れて従来用いた事はなかった。
ねずみと猫 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
浜田の娘おえいは猫らずといふ殺鼠剤さっそざいを服して最後を遂げたりしより無分別の若き男女思案に余ることあれば今にこの薬をあがなふもの絶えやらずといふ。猫入らずは即むかしの石見銀山いわみぎんざんなり。
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
五郎吉の家族は殺鼠剤さっそざいをのんだのであった。いわみ銀山しかじかの鼠取りといわれるもので、夫婦はどうやら助かるもようだが、末子のいちは死に、登がいってみたときは、他の三児も重態であった。
赤ひげ診療譚:06 鶯ばか (新字新仮名) / 山本周五郎(著)