武士つわもの)” の例文
「婦人連が汗を流して、お行儀好く、あの姿で——俺達武士つわものにお酌をする光景を想ふと、これ御同役、一興ぢやなからうかね。」
夜の奇蹟 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
「元より最初から烏合うごうの数は望まぬところ。一人だに、一念神仏に通じれば、世をも動かそう。鉄石の心をもつ、武士つわものの八十余騎もおれば、何事か貫けぬことやあろう」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倶楽部くらぶの同勢も、こう時間が切迫しては手の下しようがありません、掘り荒された古城趾、武士つわもの共の夢の跡なる夏草の繁りと、木の間を漏るる警官隊の剣光帽影を眺めて
古城の真昼 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
吟味所守備かため武士つわものどもに取り囲まれたその時には、一期いちごの難儀と怖さ恐ろしさ
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
所謂いわゆる戦場往来のおぼえの武士つわものが吸寄せられたのであった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
縦令たとい記録に残って彼等勇敢なる武士つわものと肩を竝べるほまれがあろうとも、私は夜行には絶対に自信は皆無である。思っただけで身の毛がよだつ——。
ゼーロン (新字新仮名) / 牧野信一(著)