此邸ここ)” の例文
「それがしは、戦の後、姫路城の抑えに参った徳川方の者だが、主命をおびて、播州ざかいに木戸を設け往来人をあらためていたところ、此邸ここの——」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私は折入つて、お前に頼みたい事がある。何と聞いておくれかえ。知つての通りの私の身体、此邸ここで生れた身のふしよう。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
アルトヴェル氏は元々夫人に対する嫉妬のために、此邸ここで彼女を厳重に監視しているのであった。
犬舎 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
そんな女子でない事は、それは、己れが知つてゐる。だが此邸ここの奥様の嫉妬ときては、それはそれは、烈しい例もあるんだから、今日は、よほど大事な場合。
したゆく水 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
此邸ここに客として泊っていた旅僧でもあろうか、まだ四十前後の中年の僧だった。武士のような筋骨と、太い眉をもっている。わけて眼につくのは、その大きなあかくちであった。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)