橋向はしむこう)” の例文
「あっちと同じでいいのよ。お願いするわ。宿賃やどちんだけ余計になるけど。」と言いながら、道子は一歩一歩男を橋向はしむこうの暗い方へと引ッ張って行こうとする。
吾妻橋 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ところで、いつの間に来たか、ぱくぱく遣ってるその橋向はしむこうへ、犬が三疋と押寄せて、前脚を突立てたんだ。える、吠える! うう、とうなる、びょうびょう歯向く。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
橋向はしむこうには広漠たる空地がひろがっていて、セメントのまだ生々しい一条ひとすじの新開道路が、真直まっすぐに走っていたが、行手には雲の影より外に目に入るものはない。
元八まん (新字新仮名) / 永井荷風(著)
橋向はしむこうにある昔ながらの白鬚神社や水神すいじんほこらの眺望までを何やら興味のないものにしているのも無理はない。
水のながれ (新字新仮名) / 永井荷風(著)