かい)” の例文
人声がして、水を打つかいの音がする。……すぐ窓の下で、誰かが甲高い厭らしい声で吠えはじめた。シナ人が歌っているのだろう。
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
今にして思へば政海の波浪はおのづから高く自からひくく、虚名を貪り俗情にはるゝの人にはさをつかひ、かいを用ゆるのおもしろみあるべきも
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
日の入る前、彼はいそがしくかいをあちこちに動かして船について来る死体を切り離した。いま、岩の上に打ち上げる波の音は声たかく聞えた。
浅瀬に洗う女 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
船腹の板をはがして作ったかいぐ船あしは、のろのろとしてもどかしかったが、椰子の茂った海岸へたどって行けそうな岩礁はもう目の前だった。
秘境の日輪旗 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
六人の漕手はボートを岸に乗上げさせて、かいを槍のように押立てながら怖ろしい顔をしてボートを守っていた。
漁夫上がりの弟子たちはお手の物のかいを取って、そのまま沖へぎ出しました。これを見た群衆はあわてて、我も我もとその辺の舟に打ち乗り、あとを追ってきました。
船を漕ぐのに、彼等はかいを引かず、押すのであるから、従ってへさきの方を向いている。橈の柄の末端には、木の横木がついている。彼等は一対ずつをなして漕ぎ、漕刑罪人を連想させる。
「こぐったって、かいもなんにもない」
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
かいは月光をうけてそれを糸の切れた光りかがやく水晶の珠のように振り落とした。船首の浪は巻き上がり高く跳んだ。
浅瀬に洗う女 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
夜昼なしにかいを動かしつづけても、一日の賃銀は十コペックだった。
追放されて (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
日本の舟はかいで漕ぐのでなく舷から艫で漕いでやるのである。
彼は海の波の音も聞かず、かいのない船をたたく水音も知らなかった。彼はまた夢みた、それは、七年前の夏の船出にロックリンに残して来た女の夢だった。
浅瀬に洗う女 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
眼醒めたばかりの彼らには、はだを刺すような寒風を吹きつける河が、ぞっとするほどいとわしいらしい。急ぎもせずにカルバスへ跳び移った。……韃靼人と三人の渡船夫は、水掻きの広い長いかいを握る。
追放されて (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
海賊たちはかいをうごかしたり塩水によごれた剣や短剣をみがいたりしていた。
剣のうた (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
いま岸にくだける浪の音がよく聞えて来た、海賊どもはかいの音を消した。
剣のうた (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)