柿葺こけらぶき)” の例文
窓のない柿葺こけらぶきの小屋で、二坪ほどの板敷に古茣蓙ふるござを敷いてある。入口の扉は乾反ひぞって片下かたさがりになり、どうやってみても、うまくしまらなかった。
肌色の月 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
青苔あおごけの生えている、柿葺こけらぶきをバリバリ破って、そこからやッと、首だけ出した先生の声でした。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
桁行けたゆき二十間、梁間はりま十五間、切妻造り、柿葺こけらぶきの、格に嵌まった堂々たる館で、まさしく貴族の住居であるべく、誰の眼にも見て取れた。しかし凄じいまでに荒れていて、階段まで雑草が延びていた。
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
そのむこうが露地になり、柿葺こけらぶきの茶室が建っている。手紙にある通り、かまわず広間の縁から茶室に入って行くと、なるほど、向床むかいどこの前に大きな朱色の繻珍の褥がおかれ、脇息に煙草盆。
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
肩をもって柿葺こけらぶきの屋根板を突き破ッていたのです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)