書簡箋しょかんせん)” の例文
やがてついに封を切った——手紙は目方六、七匁もある、長い、こまごまとしたものだった。大きな書簡箋しょかんせん二枚にびっしりと一面に細かく書いてある。
それから二三日たったのち、A中尉はガンルウムのテエブルに女名前の手紙に目を通していた。手紙は桃色の書簡箋しょかんせん覚束おぼつかないペンの字を並べたものだった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
悠々ゆうゆう迫らずと云った風な落ち着き払ったところがあって、はたから腹を窺いにくいのであるが、今も幸子が見ていると、三葉の書簡箋しょかんせんをしずかに卓の上に展べ
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
書簡箋しょかんせん三枚にわたってビッシリ一杯と、当地ではいつ雷が鳴って、どんな具合に自分がビックリ仰天して、どんな具合に平気であったかということを仔細に書いてよこしたが
雷嫌いの話 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そして中から四つ折の書簡箋しょかんせんを取出すと、開いてみた。そこには淡い小豆色あずきいろのインキで
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ビールやウイスキーのびんはそのまま取りちらされているが、二階には誰もいない。裏隣うらどなりの時計が十一時か十二時かを打続けている。ふと見るとまくらもとに書簡箋しょかんせんが一枚二ツ折にしてある。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
紙質の硬い三枚の洋風書簡箋しょかんせんが、四つ折になっているものを中から取り出すと、発声映画の場面で聴くような、バリバリと云う強い音をたててその紙をひろげた。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これといっしょに、モスクワにいたイワンへ手紙でできるだけ詳しく、書簡箋しょかんせんを六枚も使ってすべての事情を説明してやって、イワンをあの女のところへやったのだ。
彼は大机に向かい、書簡箋しょかんせんの入っている引出しを明けた。と、途端に中からぱっと飛び出して来た青い紐のようなものがあった。彼はきゃっと叫んで椅子と共に後へひっくりかえった。
私は彼女が熊谷に通牒つうちょうしたりすることを恐れて、書簡箋しょかんせん、封筒、インキ、鉛筆、万年筆、郵便切手、一切のものを取り上げてしまい、それを彼女の荷物と一緒に植惣のかみさんに預けました。
痴人の愛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
と、幸子は三葉の書簡箋しょかんせんを夫の方へ向けた。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)