曳舟ひきふね)” の例文
右に折れて行けば、曳舟ひきふねの停車場があるはずです。そこから汽車にのりましょう。そしてどっか遠いところへ行きましょう
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
京都の高瀬川たかせがわは、五条から南は天正十五年に、二条から五条までは慶長十七年に、角倉了以すみのくらりょういが掘ったものだそうである。そこを通う舟は曳舟ひきふねである。
高瀬舟縁起 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
町がにわかに暗くなった時、車掌が「曳舟ひきふね通り」と声をかけたので、わたくしは土地の名のなつかしさに、窓硝子まどガラスひたいを押付けて見たが、木も水も何も見えない中に
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
曳舟ひきふね駅で俺たちは降りた。話は前からの続きである。ごみごみしたきたない場末の街は、淡い暮色に包まれていた。そうして俺に何か人なつっこい挨拶あいさつを投げかけてくるかのようだった。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
曳舟ひきふねの通りが田圃を隔てて見えるほど奥まった家なのですから、私の学校へも遠くなるし、来る病人も困るだろうから、今少し出這入ではいりのよい場所を探したらと止めてもお聴きにならないで
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
曳舟ひきふね」の水のほとりをゆくころを。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)