時遷じせん)” の例文
昨日までの職掌がらで、自分も多年いろんな囚人しゅうじんを手がけて来たが、この時遷じせんアダ名を鼓上蚤こじょうそうという蚤みたいな人間は、めったに知らない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『水滸伝』中には、鶏を盗むを得意とする時遷じせんのような雑輩を除いても黒旋風こくせんぷうのような怒って乱暴するほかには取柄とりえのない愚人もあるが、八犬士は皆文武の才があって智慮分別があり過ぎる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
「知るもンか、そんなものを!」と、時遷じせんは下手人なので、あわてた色を隠せない。「おい、客へむかって、変な言いがかりをつけるなよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その間、チラと時遷じせんの目が、彼のひとみと怪しい交叉こうさわしたが、考え込んでいた金鎗手きんそうしゅ徐寧じょねいはもとよりそれに気づきもしない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)