是真ぜしん)” の例文
それから是真ぜしんというようなものでありますが、あれは芸術的なところもないこともありませぬが、だいたい職工的です。
円朝は生涯に百怪談を作る計画があって、頻りに怪談の材料を蒐集していると、その親友の画家柴田是真ぜしん翁から本所相生町あいおいちょう二丁目の炭屋の怪談を聞かされた。
寄席と芝居と (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
蔵前くらまえの八幡町、森田町、片町かたまち須賀町すがちょう(その頃は天王寺ともいった)、茅町かやちょう、代地、左衛門河岸さえもんがし(左衛門河岸の右を石切いしきり河岸という。名人是真ぜしん翁の住居があった)
薄暗いほど欄間らんまの深い、左甚五郎の作だという木彫のある書院窓のある、畳廊下のへだての、是真ぜしんいた紅葉もみじふすまをぴったり閉めて、ほかの座敷の、鼓や、笛の音に
大橋須磨子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
○九月十日 表具屋を呼びて是真ぜしん筆朝顔の掛軸の表装仕直を命ず。
草花日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
無聊ぶりょうに苦んでいるお玉は、その窓の内で、暁斎ぎょうさい是真ぜしんの画のある団扇を幾つも挿した団扇挿しの下の柱にもたれて、ぼんやり往来を眺めている。三時が過ぎると、学生が三四人ずつの群をなして通る。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
むかし柴田是真ぜしんが鈴木南嶺の添書てんしよを持つて京都へ入つて来た。
「毎年是真ぜしんさんでござんすから、今年は河竹さんのにお頼みいたしまして——」