斬取きりと)” の例文
あとには、血がにじんだ湖畔の土の上に、頭と右手との無い屍体したいばかりがいくつか残されていた。頭と右手だけは、侵略者が斬取きりとって持って帰ってしまった。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
喧嘩といえば穏かならぬようにも聞えまするが、それも太平の世に武を磨く一つの方便、斬取きりとり強盗とは筋合が違うて、お上でもむずかしゅういわるる筈がござりませぬ
番町皿屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
では王族の一人が病臥びょうが中の王のくびをしめて位をうばう。では足頸を斬取きりとられた罪人共が王をおそい、晋では二人の臣がたがいに妻を交換こうかんし合う。このような世の中であった。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかし今の身の上では二貫文のぜにも大切である。庄兵衛はその銭を懐ろにして家へ帰ったが、生れてから初めて斬取きりとり強盗を働いたのであるから、なんだか気が咎めてならない。
青蛙堂鬼談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
首狩反対論者のスティヴンスンは、早速、首を斬取きりとった者に対する所罰を要求した。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
斬取きりとられた十一の首がムリヌウに持込まれた。土人等の大いに驚きおそれたことに、其の首の一つは、少女のであった。しかも、サヴァイイの或る村のタウポウ(村を代表する美しい娘)の首だった。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)