放埒者ほうらつもの)” の例文
弟とはいえ、ほんらいなら門をくぐらせる弟ではない。義絶と世間へもいってあるのだ。なにしろ一族中での放埒者ほうらつものだ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その第一というのは、さしもに北海道切っての放埒者ほうらつものと呼ばれていた龍代が、意外にも処女であった事です。
キチガイ地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
家内も円満無事、一言のいさかいもなく、毎日笑って暮らしている、というようなことで——読んで行くと、自分は箸にも棒にもかからぬ放埒者ほうらつものだが、これでも、人を助けたり
人がいいためにそんじょそこらの放埒者ほうらつものを一々信用して、まるで得体のしれないような人とでも、自分の靴底だけの値打ちもない人とでも、一緒にお酒を飲んだことですの! でもね
彼の眼から見たらば、兄もおれも同じ放埒者ほうらつものと見えるかも知れない。誰が眼にも、うわべからのぞけばそう見えるであろう。しかし市之助とおれとは性根が違うぞと、半九郎ははらの中で笑っていた。
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
放埒者ほうらつもので鳴らした音松の悪名は、和七もことごとく承知だったのです。
「いやいや、ああいう放埒者ほうらつものに、ここまでやって来られてはかなわん、重役どもの屋敷に一時とめておいて、わざと、慇懃鄭重いんぎんていちょうに扱っておけば、そのうちに窮屈がって、向うから逃げ出すじゃろう」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)