撒散まきちら)” の例文
人が立騒いで邪魔したら、撒散まきちらかいて払い退きょうと、お前に預けた、金貨銀貨が、その懐中ふところ沢山たんとある。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あの貰った莨を一口吸った時から、心臓が咽喉につかえ、体は押潰されるようにテーブルの上に前倒のめって、四辺あたりは黝く霞み、例えようもない苦痛が、全身に激しいカッタルサを撒散まきちらながら駈廻った。
孤独 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
坊主は、——坊主は——ああ、我ながら、いやな坊主を口でいて、広間じゅう撒散まきちらしたようで、聞く耳、交す口に、この息もぞ臭かったに相違ない、とほッとした、我がその息さえなまぐさい。
露萩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)