捺摺なす)” の例文
それが分ったのは例の、どんじき屋の懸障子かけしょうじに、小次郎がいつぞや書いておいた文句を、誰か捺摺なすり消して、こう新しい墨で書かれてあったからだという。
宮本武蔵:07 二天の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
全く彼れ自身に特有な思索と観察の力によって、次第々々に鍍金を自分でがして来たに過ぎない。代助はこの鍍金の大半をもって、親爺おやじ捺摺なすり付けたものと信じている。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
全く彼れ自身に特有な思索と観察の力によつて、次第々々に渡金めつきを自分で剥がしてたにぎない。代助は此渡金めつきの大半をもつて、親爺おやぢ捺摺なすり付けたものと信じてゐる。其時分じぶん親爺おやぢきんに見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)