拾得じっとく)” の例文
閭はせわしげにあき家を出た。そしてあとからついて来る道翹に言った。「拾得じっとくという僧はまだ当寺におられますか」
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
虎に倚懸よりかかってみんな昼寝しているのだ。豊干ぶかんはもとより先生である。僕は寒山かんざんだか拾得じっとくだか、それは知らないが、一人の欠けていることが物足りない気がした。
西隣塾記 (新字新仮名) / 小山清(著)
寒山かんざん拾得じっとくの叔父さんにでも当る者に無学文盲のこの男があったのではあるまいかと思われた。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
前なるが寒山子かんざんし、後ろなるが拾得じっとく、どこぞの宝物の顔輝がんきの筆の魂が抜け出したかと、一時は眼をみはらざるを得ないのですが、再度、とくと見直せば、左様なグロテスクではあり得ない。
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
国清寺に拾得じっとくと申すものがおります。実は普賢ふげんでございます。それから寺の西の方に、寒巌という石窟せきくつがあって、そこに寒山かんざんと申すものがおります。実は文殊もんじゅでございます。
寒山拾得 (新字新仮名) / 森鴎外(著)