抑止よくし)” の例文
彼時代の元気というものは、自分にも他人にも抑止よくしすることを許しません。次郎は深夜のあけぼのの里を、再びタッタと駆け出しました。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それとあの女とに根ざした嫌惡が、面白いことをするときにさへ私を抑止よくししました。放蕩に近い享樂はみんな私を、あの女と、あの女の不行跡ふぎやうせきに近づけるやうに思はれたのです。
無言ではあったが手を上げて、資朝は抑止よくしの形をした。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
これにぶつかると、直義は幼少からの習性に抑止よくしされている平常の屈従感から、別な“弟の反抗”が抑えようなくむかっとクビをもたげてくる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼のいきどおりは、日本武士道の清節のために抑止よくしできなかった。私憤よりも公憤のほうが大きかったのである。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一、北町奉行は、南にたいする対立を抑止よくしし、南と協力して、この際の臆測や風説を解くに努めること。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
善のために悪を抑止よくしするの忍耐をもったなら——もちろんその理性の堅持けんじはやさしくはないが、ひとり画道にかぎらず何らか人生の明るい彼岸に達しられないはずはない。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の強い情熱をより強い智慧の光がねじふせるように抑止よくしした。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)