技巧ぎこう)” の例文
この時代に春琴は弾絃の技巧ぎこうのみならず作曲の方面にも思いをらし夜中ひそかにあれかこれかと爪弾つまびきで音を
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
溌剌はつらつとして美しい彼女という人間のなかには、ずるさと暢気のんきさ、技巧ぎこう素朴そぼく、おとなしさとやんちゃさ、といったようなものが、一種特別な魅力みりょくある混り合いをしていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
もっとも兄さんのような聡明そうめいな人に、一種の思わくから黙って見せるという技巧ぎこうろうしたら、すぐ観破かんぱされるにきまっていますから、私ののろいのも時には一得いっとくになったのでしょう。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)