手拭てふ)” の例文
とん、とん、とん……とその襟元えりもとへ二階から女の足音がすぐ降りて来た。如才じょさいなく彼のそばへ手拭てふきやらうがわんなど取り揃えて
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おびえたように叫んだ一人はつと浮き腰になり、すぐ何かいすくめられたように身体をこちんと固くした。他の女は手拭てふきを帯にはさんで見るからにいそいそと立ちあがった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
十四五枚も、うずたかく懐に畳んで持った手拭は、汚れてはおらないが、その風だから手拭てふきに出してくれるのが、鼻紙の配分をするようさね、つぶれた古無尽ふるむじんの帳面の亡者にそっくり。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お手拭てふきなら、ここよ」
雛妓 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
馬繋ぎ場のわきで立ちどまった彼は、振り分け荷を土塀の下の草の上において、袴の股立ももだちをおろした。手拭てふきを出して、すそを、特に脚絆きゃはんの黄色いほこりをはらいおとすのであった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
ふところから汚い手拭てふきを出して、それも流れで洗濯した。布は忽ち白くなる。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)