手塩てしお)” の例文
旧字:手鹽
また、父信長が、多年手塩てしおにかけて来た一家臣が、このときは、主従の情をこえて、骨肉にも近いような感情で、つよく眼に映った。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その子は幼少ちいさいうちから手塩てしおにかけたので、わたしを何処までも母だと思っているのです。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
今でも重吉の手塩てしおにかけられた弟子たちは、毎年鏡餅をもって歳暮せいぼ挨拶あいさつに来る。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
じぶんの手一つで手塩てしおにかけた一人娘のお妙の頼みである。まかり間違えば、おれが自分で、われとわが身に繩を打てば済むのだ——と思ったから、そこは、解りの早い江戸ッ児だ。黒門町だ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこで、どういう手段でその人をやす方法を取るべきであるか……ということになるのですが、どうといって、弟子でも置いて段々と丹精して、まず自分から手塩てしおに掛けて作るよりほかはない。
娘は十六歳でありました。すべて子供は皆同じで、いずれに愛情のかわりは御座いませんけれども、この総領娘は私が困苦していた盛りに手塩てしおにかけただけに、余計に最愛いとしまれるように思われます。
売子の着るうす汚い肌着や脚絆きゃはんなどを取って官兵衛が着替えているのを見ると、前途の危険やらその覚悟の心根が思いやられて、この人を幼い時から手塩てしおにかけた与次右衛門としては、おもてをそむけて
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)