懸離かけはな)” の例文
あかりのみなぎっている賑やかな広間であるにも拘らず、彼は何だか遠く懸離かけはなれた、暗いところへ島流しにでもされたような気持がした。
孤独 (新字新仮名) / モーリス・ルヴェル(著)
此事は、よしやかゝる望を抱いたことが将門にあつたとしても、謀反といふこととは余りに懸離かけはなれて居て、提燈ちやうちんと釣鐘、釣合が取れ無さ過ぎる。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
是について行けぬ人はあの頃からすでに有り、現に平田翁は月の世界が根の国というあの世であるようにも説かれたが、この二つの懸離かけはなれた解説は、今もまだいずれとも決定してはおらぬかと思う。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
物蔭にかがんで、新九郎がふと見ると、その人々とはやや懸離かけはなれた廊下に、黒龍紋の裃にきらびやかな袴をつけた侍が、今詰部屋から取って来た一刀を左手に提げて、奥庭の雨景をうっとり眺めていた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)