慫慂しようよう)” の例文
れより先き、平民社の諸友しきりに「火の柱」の出版を慫慂しようようせらる、しかして余は之に従ふことあたはざりし也
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
その時の自分の態度が曖昧あいまいであつたのをすず子は賛同したんだと思つた。それも無理がない。實際に自分はあん慫慂しようようしたやうな態度を示して居たからである。
計画 (旧字旧仮名) / 平出修(著)
棭斎は己卯に京までは往つたが、更に南下して菅茶山を神辺に訪ふことをばせずに已んだのである。茶山は棭斎の西遊を慫慂しようようして、「長崎は一とほり見ておきたき処也」と云つた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
私は初対面の日「文科」に長篇を連載するやう慫慂しようようを受け、いろいろ激励を受けた。
牧野さんの死 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
勿論學校からも、屡ゝ彼に博士論文を提出するやうに慫慂しようようするのであツたけれども、學士は、「博士論文を出して誰に見て貰ふんだ。」といふやうなことを謂ツて、てんで取合はうとはしなかツた。
解剖室 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
人生うらみおほき四月の廿一日堺兄は幼児を病妻に托して巣鴨の獄におもむけり、而して余は自ら「火の柱」の印刷校正に当らざるべからず、是れに兄が余に出版を慫慂しようよう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
実際に自分は暗に慫慂しようようしたやうな態度を示して居たからである。それから三阪に対しても、多田に対しても、同じ様な応答をして居つた。三人はいつの間にか共通の意志を作つたらしい。
計画 (新字旧仮名) / 平出修(著)