あき)” の例文
志「今日は臥竜梅へ梅見に出かけましたが、梅見れば方図ほうずがないというたとえの通り、あきたらず、御庭中ごていちゅう梅花ばいかを拝見いたしたく参りました」
そうでなかったら、賊は伯父を組し易しと見て、一度ではあきたらず二度三度身代金を脅喝しようとしているのでしょう。いずれにしても伯父としてはこんな心配な事はありません。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
僕は日本人の根本思想に對してあきたらないのだ。洋行した日本人は工業でも政治でもなんに限らず、唯だ其の外形の方法ばかりを應用すれば、それで立派な文明は出來るものだと思つて居る。
新帰朝者日記 (旧字旧仮名) / 永井荷風(著)
本当に、心をも身をも捨てゝかゝる、真剣な異性の愛に飢ゑてゐるのかも知れない。世馴れた色男ダンディ風の男性に、あきたらない彼女は、自分のやうな初心うぶな生真面目な男性を求めてゐたのかも知れない。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
彼は何故に失敗したるか、その資望もしくは施設の人意にあきたらざるものもあるべし。試みに寛政度の改革家松平越中守を以て、彼に比すれば、一は親藩の位地より出で、他は譜代の小諸侯より出づ。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
本当に、心をも身をも捨てゝかゝる、真剣な異性の愛に飢えているのかも知れない。世馴よなれた色男風ダンディふうの男性に、あきたらない彼女は、自分のような初心うぶ生真面目きまじめな男性を求めていたのかも知れない。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)