感興かんきょう)” の例文
てんでんばらばらで、あちらでもこちらでもゆきづまり、万事に薄弱な、熱と感興かんきょうにとぼしいものにならなければならないのです。
親子の愛の完成 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
ただしかし、実際の場所を知っている私は、この兇猛きょうもうな犯罪実話を書くにあたって、特殊の個人的感興かんきょうを覚えるのである。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
あらわれたのは、のすらりとしたおんなでした。かれはどういうものか、去年きょねんほどの感興かんきょうきませんでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
折には、蕭照も、絵筆の手元を、のぞき込んでみたりしたが、何の感興かんきょうも共にすることはなかった。
人間山水図巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
予もただ舟足の尾をかえりみ、水の色を注意して、頭をくう感興かんきょうにふけっている。老爺は突然先生とよんだ。かれはいかに予を観察して先生というのか、予は思わず微笑した。
河口湖 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
博雄は、芸術に対して、特別な感興かんきょうを持たぬらしい。音楽を熱愛ねつあいするとか、詩を作るとか、画を描くとかいう面に格別の関心かんしんをもっていない。つまりそれは散文的さんぶんてきであるといえる。
親は眺めて考えている (新字新仮名) / 金森徳次郎(著)
私は、不思議にえなかった……彼にこれ程の感興かんきょうを与えるものを果して自分が持ているであろうか、たとえそれが何であっても、必ず吉太に与えようと心に誓った。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)