悪熱おねつ)” の例文
ここで兵馬は衣裳を改めて、床の間を前に端坐して、この、まだるい、悪寒おかんの、悪熱おねつの身を、正身思実しょうじんしじつの姿で征服しようとくわだてたのらしい。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
がまん強い父が悪熱おねつにふるえて、腕まで紫色にれ上ってしまっても、彼は貝殻の膏薬をりちらした。
無心の鳥まで悲しむというので、戸口に立て空を見た時、雲は悪熱おねつで煮えるように薬色となっていた。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
悪熱おねつのようなこの静寂の中に、戸外から舞いこんだ桜ふぶきが悩ましく乱れ飛んでいる。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)