思違おもいちが)” の例文
「アア、恐ろしい。僕はこの腕の持主を知っているのです。思違おもいちがいであってくれればいい。だが、よもや……」
恐怖王 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
お君はのちに、御母様おっかさんがそうしておいたのだ、と言ったが、知らず堂守の思違おもいちがいであったろう。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、真中の道が一番近いと思ったのは、とんだ思違おもいちがいであったと見え、二里歩いても三里歩いても道の両側には竹藪たけやぶばかりが続いていて、淋しい田舎道がどこまで来ても絶えません。
三人兄弟 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
木崎というのは私のんでもない思違おもいちがいだったのかしら。彼女は彼女自身の姓を叩いていたに過ぎないのかしら。この疑問は少しの間私に羞恥しゅうちを忘れさせ私は思わず長い言葉をしゃべった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)