怖々こはごは)” の例文
私は日暮れに遊びに出た次手に怖々こはごは龜藏の家の見えるところまで行つて見たが、あたりは繩張りがされて、家は堅くとざされてゐた。
避病院 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
お駒は唯一人、怖々こはごはで病室に坐つてゐたが、てもたまらぬといふ顏をして、玄關に廣い蚊帳を吊つて寢てゐる竹丸の蒲團に這ひ込んだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
五位は利仁の云ふ意味が、よくわからないので、怖々こはごはながら、その弓で指さす方を、眺めて見た。元より人の姿が見えるやうな所ではない。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
稚いお春もこれには餘ほどおびやかされたらしく、その繪を指して「これ、何。」と、怖々こはごは訊いた。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
内佛ないぶつの安置してあつたこの室は、この家へ女氣をんなけが入るやうになつてから、納戸に用ゐられて、紅白粉べにおしろいの匂ひで一杯になつてゐるが、竹丸の怖々こはごは覗いた時、修驗者の姿は見えないで
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)