念珠ねんず)” の例文
念珠ねんずを揉んで、一心不乱に何やらじゅを唱えているほか、その広い床はがらんとして、かすかに燈明のまたたきが、おぼろに二つの影にゆらいでいるだけだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金襴きんらん袈裟けさ、水晶の念珠ねんず、それから白い双の眉毛——一目見ただけでも、あめした功徳無量くどくむりょうの名を轟かせた、横川よかわ僧都そうずだと申す事は疑おうようもございません。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
法衣ころものたもとを背に結びあげ、念珠ねんずを押しもんで、今や天狗がのりうつッたように、読経どきょうのどらし、印を切って、何やら声あららかに、呪り殺しをうける俗の男を叱咤していた。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
横川よかわの僧都は急に印を解いて、水晶の念珠ねんずを振りながら
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)