微笑ほゝえみ)” の例文
春の曙の夢は千々に乱れて薄紅の微笑ほゝえみ、カラカラと鳴り渡るしろがねの噴泉、一片ひとひらの花弁、フツと吹けば涙を忘る——泣いて泣いて泣き明した後の清々しさ……と
嘆きの孔雀 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
かれは又三千代をたづねた。三千代は前日ぜんじつの如くしづかいてゐた。微笑ほゝえみ光輝かゞやきとにちてゐた。春風はるかぜはゆたかに彼女かのをんなまゆを吹いた。代助は三千代がおのれを挙げて自分に信頼してゐる事を知つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その微笑ほゝえみは、やゝ皮肉を帯びた微笑で、もう下関以来度々此の一行が、タチアナ姫云々の嫌疑を、受けたことを明らさまに語って居るようでした。私は、その上追及する気にもなりませんでした。
たちあな姫 (新字新仮名) / 菊池寛(著)