御首みぐし)” の例文
名代の雷門はこれで焼け落ちましたが、誰か殊勝しゅしょうな人があったと見え、風雷神の身体からだは持ち出すことは出来なかったが、御首みぐしだけは持って逃げました。
かれの涙は法衣の袖にほろほろとこぼれて、大切にさげていた異国の仏像の御首みぐしにも流れ落ちた。
半七捕物帳:25 狐と僧 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
深さが半分ばかりにも減ると、水の中に石の頭が見えて来るのを、地蔵菩薩の御首みぐしといっていまして、それまで替えほして来ると、たいてい雨が降ったということです。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
今度の仏像ぶつぞう御首みぐしをしくじるなんと予感しておおきにショゲていても、何のあやまちも無く仕上って、かえってめられたことなんぞもありました。そう気にすることも無いものサ。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その翌年、私の二ツの時は安政の大地震おおじしん、三年は安政三年の大暴風——八歳の時は万延元年で、桜田の変、井伊掃部頭いいかもんのかみ御首みぐしを水戸の浪士が揚げた時である。
いかで三世如来の御姿を学ぶ御首みぐしの上に、勿体無くも俗の冠をたまうや、不幸に堪えずして斯様かようの事を仕給うとならば、寂心が堂塔造らん料にとて勧進し集めたる物どもを御房にまいらすべし
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けれども、それらが御首みぐしや、手や脚や、台坐、天冠などが手荒らに取り扱われたこととて、ばらばらになっているのを、私はまた丹念に探し廻って、やっと、どうにか揃えました。