御新造ごしん)” の例文
っかさんの方は、私だって知ってるわ。品のい、せいのすらりとした人よ。水菓子屋の御新造ごしんさんって、みんながそう言ったの。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御新造ごしんさん、お聞きなさる通り駒井能登守というお方だそうでございますよ」
「はあ、いえ、それでございますがな。まあ、御新造ごしんさん、お掛けなすって。旦那もどうぞ。いらっしゃいましたよ、つい今しがた、前刻さっき旦那かたが。」
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とっさんはね、お侍が浪人をしたのですって、——石橋際に居て、寺子屋をして、御新造ごしんさんの方は、裁縫おしごとを教えたんですっさ、才ちゃんなんかの若い時分、お弟子よ。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
有志の後援を頼みにしたので、お役所にそんな金子かねの用意はなかったんです。さあ、そうなると頼んだ職人を断るにつけて、作料を渡すにさえ、御新造ごしんさんの記念かたみの小袖。
こんなに御新造ごしんさんが気をつけてなすったお世帯だのにッて、へん、遣ってやあがら。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大した官員様のおいでですし、それに不意だし、また近常さんは目が近くって、耳が遠くっていなすったそうですからね、継はぎさ、——もう御新造ごしんさんはとうに亡くなって、子一人
御新造ごしんさんが、その振袖の時分に、お狂言か何かで、御守殿から頂戴なすッたって、……時間なんか、何時なんどきだか、もう分らないんだそうですけれど、打つと、それは何ともいえない