徒町かちまち)” の例文
わたくしは嘗て懐之がを喪つた後久しからずして下谷徒町かちまちに隠居し、湯島の店を養子三右衛門に譲り、三右衛門が離別せられた後、重て店主人てんしゆじんとなつたことがあると聞いてゐる。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
道は最初雷門から公園の外郭を廻って千束町に出て、龍泉寺町の細い通りを上野の方へ進んで行ったが、車坂下で更に左へ折れ、お徒町かちまちの往来を七八町も行くとやがて又左へ曲り始める。
秘密 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
元秀の養子完造かんぞうもと山崎氏で、蘭法医伊東玄朴の門人である。完造の養子芳甫ほうほさんはもと鳴海なるみ氏で、今弘前の北川端町きたかわばたちょうに住んでいる。元秀の実家のすえは弘前の徒町かちまち川端町の対馬鈆蔵しょうぞうさんである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)