後押あとお)” の例文
ですから寒中には、霜が荷の上に光るのです。前を引くのは皆屈強な若者たちですが、後押あとおしは若い女たちがします。一人ならず二人でもします。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
あいつは慶長八年に、ミンダナオ島のカガヤンで海賊を働いたうえ、イスパニヤの兵隊の後押あとおしをして、二万人からの明人みんじんを殺したことのあるやつだ。
呂宋の壺 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
この坂も今よりはけわしかった。そこで、下町から重い荷車をいて来た者は、ここから後押あとおしを頼むことになる。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
庇髪ひさしってリボンをかけて着物をえた所は、争われぬ都の娘であったが、それでも平生ふだんは平気に村の娘同様の仕事をして、路の悪い時は肥車こやしぐるま後押あとおしもし
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
後押あとおしを加えたれども、なおいまだおよばざるより、車夫らはますます発憤して、もだゆる折から松並み木の中ほどにて、前面むかいより空車からぐるまき来たる二人の車夫に出会いぬ。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)