弛張しちょう)” の例文
生理学を専攻する君に、こんなことを言うのは僭越だが、心臓の血圧の曲線を観察すると、かのトラウベ・ヘーリング氏の弛張しちょうがある。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
もっと内部の器官や系統に行われている変化がやはり一種の律動的弛張しちょうをしないという証拠はよもやあるまいと思われる。
厄年と etc. (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかし、そのような場合でも詳細に調べてみると、やはり海陸風に相応する風の弛張しちょうが認められない事はないのである。
海陸風と夕なぎ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それで活動に弛張しちょうきたし、それが所謂いわゆるトラウベ・ヘーリング氏の弛張と名づけられて居るが、僕は精神的活動にも同様なことがあり得ると思うのだ。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
すると、ドイツ人はすぐに、発動機なしで、もちろん水素なども使わず、ただ風の弛張しちょうと上昇気流を利用するだけで上空をけり歩く研究を始めた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
しかもまだ御形ごぎょうも芽を出さず、落寞として霜枯れた冬田の上にはうすら寒い微風が少しの弛張しちょうもなく流れていた。
鴫突き (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ラッパはむしろ添え物であって、太鼓の音の最も単純なリズムがこの一編のライトモチーフであり、この音の弛張しちょうが全編のドラマの曲折を描いて行くのである。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
弛張しちょうのはげしい風の息の偽週期的衝撃に堪えないのはむしろ当然のことであろう。
天災と国防 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そうして子細に考えてみると緊張に次ぐ弛緩の後にその余波のような次第に消え行く弛張しちょうの交錯が伴なうように思われる。しかし弛緩がきわめて徐々に来る場合はどうもそうでないようである。
笑い (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
そして音の高低や弛張しちょうにつれて私の情緒も波のように動いて行った。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとえば地球が全部大洋かあるいは陸地におおわれていたらこういう原因から起こる一日じゅうの弛張しちょうが純粋に現われるかもしれないが、日本の沿岸のような所では地方的な海陸風に相当するものが
海陸風と夕なぎ (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)